カフェ、食堂、地元住民に愛されている店など、候補は色々ある。

「ここ良いなぁ。お蕎麦は、おうちで作れないし」

 詩乃が指差したのは、素朴な蕎麦屋だった。

 昔から構えている、土地に定着した店らしい。お洒落ではないが、ほっとしそうな佇まいだ。

「いいですね」

 明人が頷いて、その店の詳細をざっと調べる。

「水が綺麗なところなので、蕎麦は美味しいと思います」

「楽しみだなぁ」

 バスは滑るように走り、すぐに高速道路に入った。

 都心のビル群が後ろに遠のいていき、下の方には平たい田畑が見え始める。

 いつものように他愛のない話をしていると、バスは少しずつ二人を別の土地に運んでいった。