「え、えっと、えへへ、どうだろ?」

 顔が急に近くなって、詩乃は小動物のようにぴくんと跳ね上がった。

「じゃ、じゃあ、デート……かも……」

 顔を真っ赤にして、小さな声で詩乃が呟く。

 恥ずかしそうな、恋を知ったばかりの少女のような佇まい。

(可愛い……!)

 どくんと心臓が高鳴るのを感じながら、明人はすっと身を引いた。

 あまり意地悪すると、止まらなくなってしまいそうだ。

「では、いつにします? 私はいつも通り、土日は空けられます」

「う、うんっ。土曜にしよっか」

 なんとか、詩乃がいつもの明るい調子を取り戻す。

 ちょうどいい日程で、月曜の祝日を控えた土曜日があった。