もう、この観光地についてはあれこれ調べた上での提案らしかった。

「しかし、旅行ですか……」

 明人が、しばし考え込む。

「あ。やっぱり、遠出するのは嫌?」

 少し翳った明人の表情を見て、詩乃が慌てて言う。

 仲良くなってすぐに、元々アウトドア派の詩乃は何度か明人を外の遊び場に誘った。

 外食することもあるし、買い物に行くこともある。

 しかし、部屋の中で落ち着いて過ごすのが、明人が一番リラックスしているようだと気づいたのだ。

 それから、二人は基本的に詩乃の家で会っている。

「ああ、いえ。そんなことは」

 明人もまた、慌てて否定する。

「決して、外出や遠出が嫌いなわけではありませんよ」

 そうだ。親しくもない人と外で会うのは嫌だが、外出自体はそこまで嫌ではない。