それは、この地方都市に住んでいる人には人気の観光地だった。
新幹線でもバスでも、二時間弱の距離だ。
京都や北海道のように、全国的にど定番の観光地ではないが、この辺りの住民にとってはよくある旅行先。
「いいですね」
明人はwebページを覗き込んで、候補地の概要を把握した。
概ね今住んでいる地域で生まれ育った明人にとっては、そこそこ馴染みのある地名ではある。
しかし、実際に行ったことはほぼなかった。
幼い頃に家族旅行で連れて行ってもらったことはあるが、当時とは感性が何もかも変わってしまっている。
成長してからは、旅行を好むタイプではなかったのもある。
「名産品もたくさんありそうですね」
古い街並み、郷土料理、豊かな自然、温泉が楽しめる観光地らしい。
知ってはいるが、あまり口にすることのない名産品が、色々とwebページで紹介されている。
「そうなの! ごはんも美味しそうだし、風情があっていいなぁって」
詩乃が、少しはしゃいだ声で言う。
