時間をかけて入念にメイクを施した顔が、かーっと熱くなっていく。

「あ、ありがと……」

 お礼を言うのが精一杯だ。

 綺麗だと、可愛いと思ってもらいたくてお洒落したのに、いざ褒められると恥ずかしくなってしまう。

 明人はというと、何事もなかったかのようにメニューを差し出してくれた。

 様々な料理があったが、いくつかあるコースのうち、ちょうどスタンダードなものに決めた。

 飲み物とコース料理を注文すると、それほど待たずに料理が運ばれてきた。

 チーズなどの軽い前菜。彩り豊かなグリーンサラダ。シンプルなオニオンスープ。

 メインのパスタには、食べ応えあるミートボールが添えられていた。

「美味しい……! そうそう、私、こういうのが好きなの!」

「よかった。やっぱり、素材の味を引き出した料理がお好みですよね」

 コース内容を見ると、本格イタリアンというよりは、イタリアン系統の創作料理のようだった。

 全体的に油分も抑えられており、塩気も控えめだが素材本来の甘みが上手く使われている。

「よく分かったね」

 詩乃はつくづく感心した。

 明人はといえば、満足げに微笑んでいる。