可憐な華はには毒がある。




とりあえず、向かいながら頭の中を整理しよう。


『月夜の宴』――誰がつけたんだよって感じの名前だけど、これがまた結構重要な集会でさ。
月が綺麗に見える夜にだけ開かれる、暴走族たちのトップ会議。

そう、ただの暴走族じゃない。
集まるのは、十傑――つまり、最強格の10チーム。


……で、うちのチーム、秘密結社ローズもその中に入ってるのかって?

まぁ、一応はね。


でも今回、私が焦っているポイントはそこじゃない。
今日初めて情報を集める子がいるってこと。


私たちのチームは普段の活動に加えて情報屋みたいなこともやっている。
情報収集とはいえ、場所が場所だから危険がないとは言いきれない。



普段なら、調子が悪い日にわざわざ出向いたりしないんだけど……
今日だけは別。私のチームは絶対に味方を裏切らない。それが信条。だから、今日は行かなきゃ行けない。私自身の為にも__



……よし、ある程度頭の中を整理できたかな?


視界が結構眩しくなってきた。見渡す限りバイク、バイク、バイク。無数のバイクが止まっている。ライトがチカチカと眩しい。バイクのライトが反射してきらきらと光る海沿いを歩く。


それにもう着いちゃったし……。行こう



――さて。



ここからは、"私"を封印する。



弱くて、明るくて、不安定な“私”はもういない。



持ってきた金色にきらきらと輝く瓶を取り出す。
これは、主治医から貰った"お薬"
中途半端に吸血鬼の能力を引き出すと体に負担が掛かるから、だそうだ。


薬の蓋を開け、はちみつみたいにドロドロしてる黄金の液体を流し込む。


ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……


「……やはり、この薬はまずいのう」


とはいえ、良薬は口に苦し、というからの。


これで――


妾は完全無欠の“ローズ様”じゃ。







そこに君臨した女はーー


艶やかな濡羽色の髪。

瞳は、月光を溶かしたかのような美しい黄金に光り、妖しく輝いている。

口元からは、鋭い牙がちらりと覗き――

その姿に魅了されぬものなどいない、と思わせる程の圧倒的な美しさをもつ吸血鬼であった。



「ククッ……妾の仲間は、どこにおるのかのぅ?」



焦る気持ちを心の奥底に閉じ込め、仲間ーー牡丹の気配を逃さぬようにゆっくりと歩き始める。