可憐な華はには毒がある。



夜の空を滑空すること数分。


やっと目的地が見えてきた。私は、自慢の薔薇の庭園の前で降り羽をしまう。

一見するとただの美しい庭。実際に日中はここを一般に解放して、バラ園として運用もしている。その資金を活動資金に当てているという訳だ。


美しい薔薇に目もくれずずんずん進む。
目指すのは、分厚い白い壁に囲まれた建物。人ひとりがやっと通れそうな小さな窓があり、倉庫と呼ぶにはあまりにも優美だ。曲線的な造形は、もはや「城」と表現したほうがしっくりくる。――私たちの倉庫。

久しぶりに会える仲間たちの顔を思い浮かべながらドアノブに手をかける。そして開く。

「やっほー!! おまたせー! みんな待ってたー?」


ルンルン気分で扉を開けたのに――



「……あれ? 誰もいない?」


いつも賑やかな部屋が、今日はやけに静かだ。


「どこ行っちゃったのかな……」


部屋を見渡す。荒らされた様子はない。


部屋の中はいつも通り綺麗なまま。



だから、襲撃に遭ったって感じじゃない……

でも――



「……やけに寒いな、この部屋」


辺りを再び確認する。冷蔵庫は、うん、ちゃんと閉まっている。扉もさっきちゃんと閉めたし……


びゅうびゅうと耳元で音がして、寒さが増す。いつの間にか窓のそばまで来ていたようだ。


ん?


窓が――開いてる?

予想を確信に変えるべく、私のお気に入りの猫足の白い棚に入っている大事な資料を探す。……やっぱりない。


ってことは、今日は集会がある日……?


今までの出来事が一瞬で頭の中を駆け巡る。
やけに綺麗にセットされていたお兄ちゃんの髪。持っていた資料たち。満月。窓を開けて出ていった仲間たち。
そして、お兄ちゃんのさっきの発言。


…………


…………


…………


お兄ちゃんが言ってた“外せない集会”って……もしかして――



『月夜の宴』



……だよね、たぶん。


……これは、まずいかもしれないな……。