可憐な華はには毒がある。

お母さんが飾ってくれたゼラニウムを眺めながら、ベットの上で寝転んでいる美少女がいる。

いついかなる時もその可愛さは揺るがない。

誰のことかって?もちろん私の事。

仲のいい人は私のことをアルスって呼ぶ。

ぼんやりと過ごしていたら、不意に胸が苦しくなる。


「ゴホッ、ゴホッ……」


手にべっとりと付いた赤い液体を見て、思わずため息が出る。
見つめていても仕方が無いので、手を伸ばし机の上のティッシュ手探りで探す。


はぁ、また吐血しちゃった……。
視界に移る血の赤と、さっきまで見ていたゼラニウムの黄色。
ここに青色の何かがあれば信号機のカラーだな、なんて馬鹿なことを考えながら血を拭き取る。


「アルス、大丈夫か?」


手に持っていた、紙の束を机に置き、兄が心配そうにこちらを見てくる。


本当は全然大丈夫じゃないけど、心配かけたくないし……。


「大丈夫だよ、お兄ちゃん。」


そう言うと、兄は少し困ったような顔をした。
困らせたかった訳じゃないのに……。


「本当はそばにいてやりたいんだが、今日の集会は外せなくてな……」


確かに深い漆黒の髪が綺麗にセットされている。
また会社の集まりかな……?首を傾げつつ、笑顔を作る。


「私は大丈夫だってば! ほら、もうすぐ夜になるしさ!」


ちらりと窓の外を見て、私の方を向いて目を合わせるお兄ちゃん。


「……じゃあ行ってくるけど、ちゃんと大人しく寝てるんだぞ」


あまり納得してない顔をしつつ、そう言ってお兄ちゃんは扉の方へ歩いていく。


「はーい!」


扉の前にいる兄に元気よく返事をしてみる。


・・・・・・。



よし、出ていった!


1人しかいない部屋の中は少し寒くなったような気がする。ちょっとだけ心細いのは心の内に留めておく。


私の体調が悪くなるのは朝方と夕方だけだから、そんなに心配しないでほしいんだけどな……。


それに、もう夜になるし。
太陽が沈んでいくのを横目で見つつ、布団からでる。
なんだかちょっと元気出てきたかも。出かけちゃおっ!


鼻歌なんか歌いながら支度を始める。
鴉羽色の癖ひとつないストレートの髪をとかし、真っ黒なレースの着いたワンピースを着る。
そうそう、お気に入りの鈴付きのチョーカー、それと...三日月モチーフのイヤリングもつけよっと。


支度が終わったので、私は窓を開け窓枠に足をかけ、太陽の沈んだ直後の空を見あげた。


ほーんとお兄ちゃんって心配性なんだから!



ーー全く、これでも一応吸血鬼なんだけどな……。