─ガチャ。





「姉さんちょっといい?」





「ちょっと、!ノックくらいしてよ、薫」





「ごめんって」




ふっと笑った薫の笑顔は昔から変わってないな。





「どうしたの?」





「数字教えて欲しくて」





「数字苦手って言わなかったっけ?」





あたしは勉強は得意な方だけど、数学だけは本当に苦手。





「言ってない」





「言いましたけど?」





いつもは無愛想なのにたまに生意気になる薫の顔はあたしにしか見た事ないだろう、と少し誇らしい気持ちになった。





なぜか、"あたしだけ"が嬉しくて、数学どころではなかった。