彼女の手を取り、歩きだした。

つながった手はほんのり汗ばんでいて。

「はは。マユさん、汗かいてる」

緊張しているんだということがすぐにわかった。

そんな俺も、しっとり汗をかいているような気がして。

俺の汗なのか、彼女の汗なのか。

「俺も、緊張してる、かも?」

突っ込まれる前に自白しておこうと素直に言うと、驚いた顔をして俺を見上げた彼女。

「うそ、すごく余裕に見えます」

相変わらず赤い顔のまま、驚いている彼女がおかしくて、笑いがこぼれる。

「はは。心臓の音聞こえそうなんだけど」

自分の心臓を指さし、どきどきが止まらないことを伝えると、やっと彼女も笑ってくれた。

時々視線を交わしながら歩く街の中。

いまだに横にいる彼女の存在に自信がなくて。

確かめるように彼女を見ると、にっこり笑った彼女。

「好き、です」

「俺も」

これが、俺たち二人の始まりで。

ここから、すべてが始まるんだ。





end.