有澤先生のような完璧な人がそんな辛い過去を背負っているなんて想像もできなかった。
「彼女の病気に早く気づいていたら…医師としてのプライドが邪魔をして……妻の本当の苦しみに気づけていなかった」彼の声が苦渋に満ちている。
「だから桜井さんを責める権利なんて誰にもない」
その言葉に救われる一方で痛みも感じる。自分を責め続けてきた日々が無意味だったように感じてしまうからだ。
私はやっぱり、有澤先生の隣に立っていい人間じゃない。
有澤先生がどんな思いで、奥さんと過ごしていたのか。心臓が押し潰される思いだった。
「でも私……」
「過去の罪悪感に囚われないで」
有澤先生がそっと近づいてきて蕾の手を取った。
「僕たちは最善を尽くした。その努力は決して否定できない」
彼の言葉に励まされている自分を感じる。それでも素直に受け入れることは難しい。
「それでも……私は、やっぱり自分が許せないです……」
「私は、有澤先生の隣に立っていい存在じゃないんです。」



