「……嘘」 蕾は声にならない声が出た。 自分の名前は新しい地域特化型病棟に記載されていたのだ。 しかもその隣には副担当医の名前として「有澤裕紀」と書いてある。 「桜井さん……よかったね!」吉岡さんが小声で喜んでくれた。 「また、先生と一緒だね」 その瞬間、周りの喧騒が遠のいたような気がした。 信じられない思いで何度も自分の名前を見直す。間違いではない。