駅のホームに列車到着のアナウンスが流れた時、遠くから足音が近づいてきた。
蕾は振り返ると、そこに立っていたのはーーー
少し息を切らせた有澤先生だった。
所々に小さな雪が付着し、コートもマフラーも少しだけ乱れている。
「えっ……先生?」
蕾は、嬉しさと安堵で、胸がいっぱいになった。泣きそうになるのを必死でこらえた。
驚きで声がかすれる。有澤先生はゆっくりと微笑んだ。
「……っ、びっくりした。桜井さん、あのまま、帰ってるからっ……」
そして有澤先生はゆっくり息を整えながら、蕾の隣に座ると、静かに言った。
「……困ったよね。」
有澤先生は白い息を吐きながら呟いた。
「(あぁ、そっか。先生も私と同じだ……)」
「(なのに。私はそんなことも目に入らず、自分の事に必死で、先生の立場も考えずに、軽率な行動をとってしまってた…。)」
蕾は心の中でふと、そう思った。
有澤先生はゆっくりと微笑んだ。
「ごめんね。やっぱり言わなきゃいけないことがあって……」
そして有澤先生は蕾の隣に座り、優しく手を取った。その手はとても温かいものだった。
「今まで、色々あったけど、、」
有澤先生の白い息が、現れてはゆっくりと消えていく。
「また、こうして話せるから。たとえ、どんなに離れてもさ、また……こうして、会える。」
「……っ。」
「(ねぇ、先生…?
先生はいつもそうやって簡単にいい退けちゃうんだよね。
私が想像もしていない、時々
斜め上の方向にいくこともあるけどさ、
こんなにも私に暖かい言葉をくれるんだ。
私が、欲しかった言葉をいつもくれるんだよ。
先生の言葉が私にとって、どれだけ救われていたか。
先生は、知らないんだろうなあ…。
私は、そんなあなたを、あなたの事を……。)」
彼の真剣な目に蕾の胸が高鳴る。泣くな自分と言い聞かせなが、鼻の奥がつーんと走る感覚が伝わった。
列車が滑り込んでくる音が遠くから聞こえる中、二人は互いの手をしっかりと握りしめていた。
「(このまま、時が止まればいいのにな。なんて。)」
二人の指が絡み合った瞬間、蕾の心に、凍てつくような誤解が、溶けていくのを感じた。
蕾がはっと気付いたときには、視界が少し涙でぼやけた。
先生はそんな私を、暫く、優しい顔で見つめ返していた。
その時、電車がホームに滑り込んできた。
蕾は今の気持ちを、その勢いで先生に伝えた。



