あれから、蕾と有澤先生の関係は、どこかぎこちないものになっていた。
あの言葉の真意が、蕾にはまだ掴みきれていない。
期待していいのか、それとも、ただの私の思い過ごしなのか。
「有澤先生、おはようございます」
ナースステーションで有澤先生に声をかけるが、先生はいつもより少しそっけない。
「あぁ……、桜井さん。今日の回診、よろしく」
その声は、いつもと変わらないはずなのに、蕾には氷のように冷たく聞こえた。
有澤先生も、蕾の心情を推し量っているのか、それとも、あの言葉の後に、
自分自身も戸惑っているのか、蕾には分からなかった。
ただ、以前のように、桜の木の下で穏やかに話すことはなくなり、
二人の間には、透明な壁ができてしまったような気がした。



