「...そうだったら、どうしますか?」
蕾は、勇気を振り絞って、ゆっくりと先生を見上げ
そう返した。
有澤医師は、一瞬、目を見開いた後、寂しげに微笑んだ。
「最近楽しそうだね、山田くんと。」
その言葉は、蕾が期待していたものとは全く違う、冷たい響きを持っていた。
山田との関係について、彼はそう言っているのだ。蕾の希望は、一瞬にして打ち砕かれた。
「先生、それはっ!本当に誤解なんです。」
蕾は、必死に否定しようとした。しかし、有澤先生は、彼女の言葉を遮るように、さらに続けた。
「桜井さんは、僕だけを想ってくれていると、思ってたのにな。」
「……っ」
その言葉は、蕾の心を激しく揺さぶった。
彼は、自分のことを、そんな風に思ってくれていたなんて初めて気が付いた。
蕾は、有澤先生の真意を測りかねて、ただ立ち尽くしていた。
どう応えていいかわからない。
けど指輪は?奥さんは?ここで好きと伝えてもし、幻滅されたら?関係が崩れてしまったら?色々な疑念も頭の中で処理しきれない。
このどうしようもない感情を、どうすればいいのか。
「私はっ………」
胸が苦しくて息ができない。
私は先生とどうなりたいのか。
ただでさえ許されない恋をしているというのに。
すぐに答えが見つからない。
先生の言葉はこんなにも私を混乱させるんだ。。
蕾は激しく脈をうつ心に蓋をして、有澤先生の顔を見ることができず、そのまま、足早に病棟を後にした。
冬の夜風が、彼女の頬を冷たく撫でた。蕾の心は、凍てつくような寒さと、燃え上がるような熱さで、激しくかき乱されていた。



