さくらびと。 恋 番外編(3)






 一方、有澤先生もまた、蕾への自身の気持ちに薄々気づき始めていた。








彼女の真面目で優しい人柄、患者への献身的な姿勢、そして時折見せる屈託のない笑顔。







その全てが、彼の心を惹きつけていた。








しかし、亡き妻への想いが、彼の心を縛り付けている。











二年前のあの日、妻は亡くなった。その悲しみは、今も彼の心に深く刻まれている。











蕾の存在が、その悲しみを少しずつ和らげてくれる一方で、罪悪感も密かに感じていたのだ。










 
 「桜井さんは、いつも患者さんのことを第一に考えてる。すごいよ。」







 
 有澤先生は、蕾の仕事ぶりを称賛した。







その言葉に、蕾は嬉しさを感じながらも、同時に、彼に本当の気持ちを伝えられない自分自身に、もどかしさを感じていた。









 
 「ありがとうございます。でも、先生ほどじゃないです。」
 









 「そんなことないよ。桜井さんの優しさはさ、患者さんたちにとって、何よりも大きな支えになってる。」









 
 有澤先生は、そう言って、蕾の瞳をまっすぐに見つめた。






その視線に、蕾の心臓は早鐘を打った。








冬の冷たい風が、頬を撫でる。二人の間を吹き抜けていく。その風に乗って、蕾の想いが、有澤先生の元へと届かないだろうか。









蕾は、この募る想いを、どうすればいいのか、ただ立ち尽くすしかなかった。








有澤先生の隣で、彼女は静かに冬の空を見上げていた。