さくらびと。 恋 番外編(3)






ある日、蕾は中庭の桜の木の下で、有澤先生がいつもみたいに一人佇んでいるのを見かけた。







 
 「先生、お疲れ様です。」








 
 蕾が声をかけると、有澤先生はゆっくりと振り向いた。








 
 「ああ、桜井さん。休憩?」







 
 「はい。ちょっと休もうかと。」







 
 「そうか。僕もだよ。」
 







 有澤先生は、かすかに微笑んだ。






その笑顔は、どこか遠くを見つめているようだった。






蕾は、彼の左手の薬指に嵌められた指輪に、再び目をやった。その指輪が今は二人の間の、見えない壁、いや蕾にとっては足枷となっている。






 
 「先生、最近、お忙しいですか?あまりお話しする時間がなくて。」
 






 蕾は、思い切って尋ねた。有澤先生は、少しの間、言葉を詰まらせた後、静かに答えた。










 
 「うん、まあ、色々とね。新しい症例も多いし。」









 
 その言葉には、何か隠された意味があるような気がして、蕾の胸は締め付けられた。






有澤先生は、蕾の気持ちにどこまで気づいているのだろうか。








それとも、自分だけが、彼に特別な感情を抱いているのだろうか。