さくらびと。 恋 番外編(3)

 






 診察が終わり、有澤先生は処方箋を蕾に手渡した。












蕾は、いつものように「ありがとうございます」と伝えようとしたが、また掠れた声しか出なかった。












 処方箋をもらい、蕾は診察室を出ようとした。











その時、有澤先生が、ふと、蕾の背中に向かって声をかけた。
 










 「桜井さん」








 
 「はい」









 
 蕾は、振り返って、有澤先生を見た。










 
 「僕は、そんな声も結構、好きだけどな。」










 
 有澤先生は、そう言って、いたずらっぽく笑った。








その言葉は、蕾の予想を遥かに超えたものだった。










驚きと、嬉しさと、そして、どうしようもないほどの照れくささが、一気に蕾の全身を駆け巡った。








 
 (え...?)








 
 有澤先生の言葉の意味を、蕾はすぐに理解できなかった。








その言葉は、雷に打たれたような衝撃を蕾に与えた。








そしてその響きが、自分の心に深く、深く染み込んでいくのを感じた。





掠れた声でさえ、彼は「好き」だと言ったのだ。








それは、単なる励ましの言葉なのだろうか。









それとも...。















有澤先生の顔は、それからパソコン画面に向いていたため、どのような表情をしているのか、蕾には見えなかった。