待ちに待った次の休み時間。
授業と授業の短い合間に、あたし達は小走りで保健室へ向かった。
香織の言ってた“名簿”は、ほんとにあった。
全校生徒の顔写真と名前が、ずらーっと並んだ分厚いファイル。
『これだ!』
香織が見つけて、パラパラとめくっていく。
迷わずに開いたのは3年生のページ。
1組、2組……
順番にページをめくっていく。
並んでいるのは、おびただしい数の生徒の顔。
知ってる先輩、知らない先輩。
男子生徒、女子生徒……
——ドクッ!
瞬間。
心臓の音が一段階、大きくなった。
「あっ……これ、この人!!」
あたしの指が止まった写真。
それは確かに、今朝廊下ですれ違ったあの人。
その下には、こう書かれていた。
黒田 蓮(くろだ れん)
……くろだ…れん…。
あたしはその名前を、心の中でそっと繰り返した。
