俺はその日全てを辞めた

ーピピピピッピピピピッピp
「もう五時かそろそろ起きなきゃ」
スマホのアラームを止めた。それと同時に日付が目に入る3月11日だ。
「えっ!?」
スマホの画面を見た薔薇(そうび)は目を見開いた。何故なら
「私が寝た日より三ヶ月も経ってる!」
そう。自分が寝た日から三ヶ月。正確には三ヶ月と四日経っていたのだ。
「とりあえず下に降りよう」
元々する予定だった勉強を後回しにした。薔薇は心の中で「もう三ヶ月経っているけど」と自分にツッコンだ。
下に降りると40代半ばぐらいの歳をした女性がバックに物を詰めているようだった。その人を見て薔薇は「お母さん何してるの?」と何もなかったように声をかけた。すると、お母さんと呼ばれた人がこちらを振り返り、
「仕事の準備よ。今日も遅くなりそうだからご飯自分でお願いできる?」と薔薇に問いかけた。
それに対して薔薇は「もちろん」と元気よく返した。薔薇にとってはすでになれていた。するとスマホの液晶がひかり、着信音が鳴った。仕事の人からの電話だろう。そしてお母さんは「はい、白雪です」と言いながらリビングから出ていった。
白雪 薔薇(しらゆき そうび)
それが彼女の名前だ。母親の名前は白雪 百合(しらゆき ゆり) 。毎日仕事が忙しく、朝早くから夜遅くまで働いてくれている。全く今風じゃない会社だと薔薇はつくづく思っていた。それにしても何も言われない。薔薇は
「私は三ヶ月間何していたんだろう?」
という疑問で頭が埋め尽くされた。数分後母親が戻ってきた。時刻は六時三十分。もう家を出るらしい。
行く前に、「ちゃんとご飯食べて部活行くのよ」
と言い残し、せかせかと家を出ていった。
母親の言葉を聞いて、今日が部活だということを思い出した。部活は八時半からで、八時十分までに集合しなければならない。八時半からなら八時半集合にすればいいのにとずっと思っていたことを心の中で思いながら準備を進めた。
三十分後準備が終わり、母親が作ってくれていた料理をニュースを見ながら食べ進める。どうやら今日は雨予報らしい。十分ほど経った頃ご飯を食べ終え、学校に向かった。今は春休みだが、部活はきっちりとある。そうびはバドミントン部なので体育館前集合だが、テニス部や野球部はグラウンド集合らしい。冬なのに大変だと思いながら家の鍵を閉めていると突然声がかかった
「あっ薔薇!」
振り向くとそこにはぎりぎり髪を結べる長さに髪を切り揃え、テニス部の部活Tシャツを着た身長160センチほどの女の子が立っていた。