オレンジ色の奇跡



「……なんで祥也がここにいるんだよっ!……ちっ」

 舌打ちをして祥也を睨みつければ、ニヤニヤとした笑みで俺を見てきた。

「そんな真っ赤な顔で睨みつけられても怖くないから!」

「はぁぁー。……祥也こそ椎葉とどこほっつき歩いてんだよ」

 俺は大きなため息をついて祥也の隣にいる椎葉に目を遣る。

「……あっ。…神崎先輩が送ってってくれるらしくて。
あの…舞希ちゃんと何かあったんですか?」

 椎葉、痛いとこついてくるな……。

 まぁ、俺が相川のこと好きだって知らねぇからしょうがねぇけど……。

「…………なんもねぇよ」

「…でもっ!そのマフラー、舞希ちゃ――」
「優衣行こっか?あんまり遅くなると家の人が心配するだろ?
じゃあな、啓輔。俺、イチャイチャして帰るから」

「そ…うですね。
イチャイチャして帰りませんけど。岩佐先輩、でわ」

「…おう」

 椎葉は、バッサリと祥也の願いを否定し、軽く会釈をして歩き始めた。

 親友が気が利くやつでよかったとはじめて思ったな。

「……明日詳しくな」

 祥也はニヤリとして呟き、椎葉の背中を追った。

「………前言撤回だ、バカ野郎!」

 俺は祥也に聞こえないように吐き捨てる。

 ホントに、前言撤回だな。