◆……

「……すけ………啓輔っ!」

「……ん……はい。何ですか?」
 朝っぱらから騒がしい人だ。

「舞希に起こせって言われたんだよ。
………お前さあ、ケーキ好きか?」

 朔真さん、相川に使われてるし。

「…………好きですけど?」

「お前のせいかよ……
舞希が朝っぱらからケーキ作ってんだよ。」

 ため息混じりに朔真さんは最悪だという顔をしている。

「そうですか……」

「…………お前、男だよな?」

 見て分かるよな?

 甘いもんが好きだからってそんなこと聞くのか?

 何なんだ、この人は……。

「男ですけど?何か」

「………何もしなかったのか?」
 あぁ………、相川のことか。

「もちろん我慢しましたよ」

「いやいや、我慢って………。
そういう柄じゃないよな?」

「………初めて自分から好きになった女ですよ?

慎重にいかないと………。

下手して嫌われたくねぇから………」

「だからって俺の好意を無駄にしなくても」
「やっぱりわざとだったんですね…?」

 朔真さんは「しまった」という顔をしている。

 まぁ、朔真さんならわざとだろうと思ってたけど。

「いや、だからその、な?」

「はぁ………」

「悪かったって」

 朔真さんが笑いながら謝っていると、ガチャっと小さな音ともにドアが開き、相川がひょこっと顔を覗かせた。

「………おはようございます」

「おはよ」

「朔兄全然戻ってこないから……。
朝ご飯できてますよ?」

「舞希ごめん、ごめん」

「あぁ……。すぐ行くから」

「分かりました」

 相川はほっとしたような表情で部屋をあとにした。