「相川色々と悪いな」

 対面式キッチンのカウンター側から中を覗く岩佐先輩は何かもう元気がない。

「えっ? ああ、ご飯なら最初から先輩の分も作ってますから心配しないで下さい」

「そうか? でも――」

「家まで運んでもらったんです。ご飯はお礼ってつもりだったんですけど……迷惑でした?」

 「そ!そんなわけねえだろっ」と早口で言った岩佐先輩は踵を返してソファーにちょこんと座った。

 ちょこんと座る姿がなんだか可愛くて、でも、笑っちゃいけない気がして必死に声を殺す。

「あ……朔真さん何で風呂掃除嫌いなんだ?」

 半身振り返った岩佐先輩は不思議そうにしていた。

「昔、お風呂掃除してたとき間違ってシャワーからお水出しちゃったんです。それで、びしょ濡れになって。次の日、熱が出て3日間くらい寝込んだんですよ。 あと、転んだり。 それから、お風呂掃除は悪いことしか起きないってお風呂掃除を嫌ったんです」

「……あー。ま、朔真さん少しぬけてるとこあるもんなあ」

 あ。

「誰が少しぬけてるって?」

「うわっ!!」

 飛び起きた岩佐先輩を朔兄が追い回してて、なんだかもう一人お兄ちゃんが増えた気がした。