「舞希、痩せた?」

「先輩の所為ですね。あ、そうだ!殴ってもいいですか?」

「え?また、俺ケガするのかよ」

「そしたら、消毒くらいはしてあげますよ?」

 岩佐先輩は「ふーん」と言いながら、あたしから手を離し後退りを始めた。

「岩佐先輩………」

「……ん?」

「何で、逃げてるんですか?」

「いや。もう、ケガはしたくねぇなぁって……」

 別に、冗談だったのに、っていうのはこの際秘密。

 離れてく岩佐先輩にちょっとだけムカついて、反対方向に歩き始める。

「舞希っ!ちょっと、止まれ。こっち向くなよ?」

 後ろから肩を掴まれ、しばらくすると、首元にヒヤリとする感覚。

 あれ?と、思って視線を下げると、投げ捨てようとしたネックレス。

「……これっ」

 慌てて振り返ると、岩佐先輩は「あっ。こっち向くなよって言ったんに」と、目を細めた。

「大事にしろよ?」

「はいっ!」

 額にキスを落とす岩佐先輩とあたしを祝うように、柔らかく暖かいオレンジの光があたしたちを包んだ。





◆…End