「なんだか舞希の話で持ちきりみたいよ?」

「え、やっぱり、あたし?」

「みんなが話してるのって舞希ちゃんのことなんだね」

「正確には、舞希って言うより……」

 一番気になるとこで、口を閉ざしますか?

「え?何よっ!」

「耳を澄ませば聞こえるわよ」

 ………え?

 あの、梨海が言ってくれたほうが早いんじゃないんでしょうか?!

 梨海を見つめてみたけれど、どうやら話す気はないらしく、ほらほらと、教室の中で一番人数の多い塊を指差す。

「………15人をひとりで?!」

「うん。先輩がそう言ってた」

「金髪の人でしょーっ?!スゴいよねっ」

「岩佐啓輔先輩、ね。ほら、相川さんの彼氏」

 あのー。
 どう考えても、あたしのことじゃなくて岩佐先輩のことだよね?

 梨海さん、紛らわしいですけどーっ!!

 それにあたし、岩佐先輩の彼女じゃ…。

「違う違う!別れたんだって」

「あんなに、仲良かったのにねぇ」

「あれ?でも、舞希さんも強いって聞いたよ?」

「あー!先々週のヤツでしょ?カッコいいよねっ!七瀬さんと椎葉さん守ったんだよねーっ」

 梨海さん、紛らわしくありませんでした、はい。

 それより、『岩佐先輩』『15人をひとり』っていうワードが、ちょくちょく、そして教室の至るところから聞こえてくるんですが。

 一体、何事?!