身体の一部がなくなったようなポッカリとした気分で、しかも廊下は寒くて憂鬱だっつうのに。

 俺の腕を強く握り、早歩きで廊下を進む茶色い髪を頭の上で団子にしてる女の背中を眺める。

 はぁー。
 だから、来たくなかったんだよ。

 バカだろ、祥也の野郎。
 週の初めの月曜日早々、椎葉に会いにいくならひとりで行けよ。

 適当に2年の校舎から離れたところで腕が解放され、俺の腕を引っ張った張本人が振り返った。

「な・ん・で、来たんですか」

「あのバカ見れば分かるだろ」

「舞希が退院後、初めて学校に来るからじゃなくて?」

「………ちげぇよ」

 コイツ――七瀬は、祥也に連れられて来た俺を真っ先に見つけて廊下に出て来てそのまま連行。

 そりゃあ、そうだよな。

 俺は、理由も言わずに舞希を振ったんだから、しょうがねぇけどさ。

「……その傷。岩佐先輩、朔真さんに殴られたんですか?」

「いや。電話も何も」

「やっぱり。何でだか分かります?」

 朔真さん、すっげぇ怒ってるんだろうな、とは予想はしてたけど。

 もちろん、殴られる覚悟も。

 だから、変だな、とは思ってたんだ。