「おい、こっちにこいよ。アンタも相手してやるよ」

 男のひとりがあたしの腕を掴んで引っ張ろうとする。

「……触らないで」

 小さく呟いたあたしは、腕を掴んでいる男の腕を握りしめ綱引きの要領で後ろに引く。 男は、バランスが崩れてそのままドアにぶつかった。

 あっけにとられてる男の前を通り過ぎて、優衣に駆け寄った。

「優衣っ。立てる?」

 コクコクと頷く優衣。

「……後ろのドアから逃げるよ」

 優衣を立たせてから、あたしの背中に隠し、そう言えば「……ごめんね、舞希ちゃん……」と静かに震える声で呟き、あたしの制服の裾を握った。

「おい、てめぇ。何すんだよ」

 さっき顔面をドアにぶつけた男。気絶くらいすれば良かったのに。意外と頑丈なのね。

 我に返った男たちはあたしを睨み近づいてくる。 それに従って、優衣とあたしは少しずつ後ろのドアに向かって下がっていく。

「ナメんなよっ!」

 あともう少しっていうところで男が顔面目がけて殴りかかってきた。

「っ!!!!」

 やばっ……顔の前で止めたけど、強い。力の差なんて分かり切ってたけどっ。

 じりじりと近づく握りこぶし。それを止める右手手のひらの力を抜いて、顔すれすれに後ろに引いた。男が前のめりになったところで腹に一蹴。

「んぐっ!!」

 その場に倒れた男を見てから、

「優衣っ! 早く行ってっ!」

 少し振り返って、「舞希ちゃんは?!」と驚く優衣の背中を押して教室から押し出した。