オレンジ色の奇跡



「……よしっ!あたし、公衆電話に行ってくる!」

「いいじゃん。1回くらい、病室(ここ)からかけたって」

「え?でも、病院だし?」

「大丈夫、大丈夫。ほらよ」

 何が大丈夫なのか聞く前に。

 あたしの携帯を奪い、なにやら操作してこちらに寄越せば、すでに呼び出し音がかかっている状態。

「なっ!?」

 慌てて耳につけると、心臓の音がうるさくなってきた。

 晴兄を見上げれば、ニヤリとほくそ笑んでいる。

 呼び出し音が一息つく毎に、壊れるんじゃないかってほどに心臓が全身に血を送り、その所為で手が汗ばむ。

「…まだ出ないのか?」

「うん。あっ。……切れた」

「は?何だよ。期待させやがって」

「バイト中なのかな?またかけ直してみる」

「おぅ。じゃ、またな」

 あたしの胸のうちを汲み取ったのか、柔らかい笑顔を向け、頭をくしゃりと撫で病室を出ていった。

 バイト中だから出れなかったんだよね?

 ………そうだよね?

 しん、とした病室にひとり残されるのは酷く虚しくて、不安に駆られる。

 許してもらえるまで謝るって決めたんだから、諦めない。