二段飛ばし。だけど、ゆっくりと階段を上る。それが終わると、鉄の塊が現れた。ガチャン、と音を鳴らして押し開ければ、秋晴れの空が広がっている。

 灰色のだだっ広い地面の屋上は俺の特等席。

 煙草に火を付け、煙をくゆらしながら、一昨日のことを思い出していた。

 一昨日公園にいたのは偶然、ではなかったんだよな。バイト前の空いた時間の暇潰しが公園。それが俺の日課。

 初め見たとき、根拠もなく怪しい女だと思った。けど、違った。

 ガキとブランコで一緒に遊んでた女。そのガキが母親に呼ばれて、ブランコから降りた時。

 女がしゃがんで、ガキの頭に手を置いて撫でながら笑顔を向けた。 その女は、ガキみたいに無邪気に笑ってた。

 夏の空から秋の空に変わる綺麗なオレンジ色の夕陽。 その影響で肩くらいの長さの髪が少し明るめの茶色に見える。

 まだいくらか生ぬるい風が吹く中立ち上がり、母親とガキの背中を見つめる女の髪がなびいた。その時の横顔は、どことなく大人っぽくて不思議と心が癒された……気がしたんだ。

 あの女の横顔から目が離せなくて、ずっと見ていたいと思った。

 俺はあの女――相川舞希の笑顔に――

 ――心を奪われてしまっていた