オレンジ色の奇跡



 昨日、朔兄にじゃんけんで負けてから覚悟はしてきたんだから。

 そういうことは、初めてだし怖いっていう気持ちはある。

 もちろん、大事にしたいっていう気持ちも、岩佐先輩じゃなきゃ嫌だっていう気持ちも。

「だって、なんだよ?今日、クリスマスだろ」

「クリスマスだから飲んでほしくないんです!」

 岩佐先輩の髪の毛から手を離し、ゆっくりとその場に座り後ろから手を回した。

「どうした?ちゃんと言わなきゃ分かんねぇよ」

「あのね、先輩。そ、の。今日、クリスマスイブでしょ?

あたし……初めてだから、お酒のいきおい、とかは嫌な、の」

 岩佐先輩は、動かしていた手をピタリと止め、

「……そ、うだな。今日は飲まないよ」

「ありがと…」

「あのさ、舞希」

「はい?」

「胸、あたってる」

「え!ご、ごめんなさい!」

 ひぃぃぃっ!
 何やってんだ、あたし!

 素早く立ち上がりキッチンから出て、薄型テレビの脇に置いてある時計に目を落とす。