俺が、兄貴はいるか?と聞いたとき。そりゃ、まあ、少し驚いてたみてえだけど、すぐ柔らかい表情に戻った。 それから、なんだか楽しそうで嬉しそうにしゃべってた。

 それだけで、あいつは兄貴が好きなんだなと分かる。

「もしかして……舞希ちゃんがアメリカに行ってた理由って……」

「そうかもしれねえし、そうじゃねえかもしれねえ」

「何もないといいけど……」

「俺が卒業するまでは大丈夫だ」

「どうしてそんなことが言えるんだよ」

「忘れたか? 俺は今は無き相川派の野郎だ。そのトップだった人の身内って考えれば分かるだろ。“不良のヒーロー”と呼ばれた奴が少なくともこの学年にはいる」

 この学年には、だけどな。と付け足して俺は祥也を置いて歩き出した。