スッと長い腕が伸びてきたと思ったら、あたしの腕が引っ張られ、ジョンの厚い胸板に顔を埋める状態になっていた。

 息苦しくなり顔を上げようと思ったが、がっしりと掴まれているため横に向けるのが精一杯。

 あたしの右耳がジョンの胸板にぴったりとくっついている所為か、ジョンの規則正しい鼓動が耳に伝わってくる。

「オイ、キンパツ!」

 ジョンが話すとくぐもった声が右耳に響く。

「啓輔だ」

 正常に働いている左耳から岩佐先輩の声が入ってくるのが分かる。

「ハァー、ケースケ」

「何だよ。ていうか、舞希離せよ」
「イヤダ」

 いい加減、離してほしかったため岩佐先輩の言葉に嬉しく思ったが、ジョンがピシャリと断った。

「てめぇ……」

 岩佐先輩のどすの利いた声などまったく気にしていないジョンは、あたしを抱きしめる腕をさらに強くした。