「あっ! 君が編入生ちゃん、かな?」
優衣を抱き締めながらあたしの方に顔だけ向けて、あまーい笑みを零す、優衣命みたいな先輩。
「あ、はい。そうですけど?」
「俺、3年の神崎祥也で優衣ちゃんの彼氏。 よろしくね?」
「かかか彼氏?! ち、違っ!! 神崎先輩何言ってるんですかっ」
「あれっ? 違った?」
「違いますっ」
真っ赤になって必死に否定する優衣。いいのかなー。あんなに否定しちゃって。
「優衣付き合えばいいのに」
そんな二人を見て、さらっと言った梨海は、優衣に優しく、そして意味ありげに微笑んだ。
「やっぱ、梨海ちゃんもそう思うよね?それで、編入生ちゃんの名前は?」
「あたしは、相川舞希(あいかわまき)と言います。 優衣、梨海と同じく2年です。よろしくお願いします」
「へぇ〜、舞希ちゃんって言うんだ。 舞希ちゃんは彼――」
「相川?」
神崎先輩の話を、遮ってどこからか声が聞こえた。
「はい。相川ですけど……?」
声の主を探すけど見つからない。少しの間キョロキョロと辺りを見回していると、
「どうしたんだよ啓輔。興味でも湧いた? こいつは、岩佐啓輔。俺と同じ3年」
と神崎先輩が優衣ごと振り返りながら、紹介してくれたのは――
「あっ!!」
そこには、だるそうに壁に寄りかかる、何故か一昨日助けてくれた金髪不良男――岩佐先輩の姿があった。

