オレンジ色の奇跡


「その先輩のことなんて見たことないけど、自分でよーく考えなきゃだめなんだからね?」

「確かに、舞希が言ってることは合ってるんだから。っていうか、自分でよーく分かってるでしょ? あの先輩のことなんて」

 困った表情を浮かべる優衣に追い討ちをかけるように、


『キャァァァァァァ!!』


 凄まじい黄色い声が廊下に響いた。

「ゆーいちゃんっ!」

 響いてすぐ、語尾にハートマークが付くんじゃないかと思うくらいの甘い声で、ガバッと、優衣を後ろから抱きしめた男。

「きゃっ!! かかか神崎先輩っ」

 またしても周りから『キャァァァァァァ!!』と黄色い声が沸き上がった。

 うるさいったらありゃしない。

 梨海が言ってた学校一のイケメンって意味が分かった気がする。

「あれが、その先輩?」

「そうそう。見た目はかっこいいと思わない?」

 中身は別だけど、と腕を組む梨海。 うん、確かに容姿は良いと思うけど……ちょっと軽そうな男かな。