パチンパチンと花器に花を生ける音が響く。

 日本庭園さながらの庭を前に淡い桃色の着物を着こなし、花を生ける姿はまさしく大和撫子………。

 とまではいかないが、綺麗に結われている少し明るい茶色の髪が少しばかり色っぽさを醸し出している。

 辺りが暗くなればそれに合わせてライトアップされる木々たち。

 スッと立ち上がり縁側に出れば冷たい風が微かに吹き頬を掠(かす)める。

 和室に取り残された携帯が寂しそうに震えている。


「はい、もしもし」

 凛とした声が和室に響く。

『よぉ、梨海』

 男らしい低い声だが耳には丁度良い塩梅で心地良いくらいだ。

「『どうするの?する?
ジョンのことだからまだ迷ってるんじゃないの?』」

『ん?するに決まってんじゃん。舞希の困った顔拝んでから帰ろうと思ってさ……』

「『結局は楽しんでるんじゃない。
まぁ、楽しまないとジョンは悲しいわね。』」

『ふっ。ヤツの焦った顔見たいな。』