その手の主に顔を向ければ、今にも泣きそうに顔を歪めた後輩くんの姿が目に入った。

「…………何でですか?」

 なぜって聞かれても……。

「…じゃあ、なんであなたはあたしを好きなの?
今日まで、話したこともなければ顔も知らなかったのよ?あたし。
なぜって聞かれても困るわ」

「………俺は、ただ先輩の優しさに……」

「ぶつかってモノが落ちたら拾うのが当然よ?
優しさというよりもあたりまえのことをしただけなんだけど……?」

 あたしが、言ったことに対し、後輩くんは一瞬俯いたがまたパッとあたしの方を向きズンッと近づいた。

「…それでも、先輩のことが好きです。
どうしてもダメですか?」

 か、顔が近いっ!!!

 近い、近い、近い!!

 どちらかが動けば、唇があたってしまいそうなキョリ。

 助けを求めたくても、後輩くんのバカデカイ身長のおかげで、160センチとちょっとのあたしの姿なんて見えてないだろうし、それより今この場所は人気がない。

「だからっ!ダメだってゆっ」
「ナニ、シテルノ?ソコノ、ボーイ?」

 どこからだか分からないが、片言の日本語が聞こえてくる。

 後輩くんも怪しく思ったのかバッと後ろを振り返った。