「先輩っ!好きですっ!付き合って下さいっ!!」

 聞きなれていないフレーズにあたしの頭はついていかない。




 昼食をとった後、梨海と優衣と話していれば見知らぬ男の子に呼ばれた。

 上履きの色を見たところ1年生であろう後輩くんは、お昼頃になると人気(ひとけ)がなくなる玄関近くまであたしを連れてきた。

 何なんだろうと思っていれば、後輩くんは一呼吸おいて……、



「先輩っ!好きですっ!付き合って下さいっ!!」



「…………は?」

 まったく意味が分からない。

 この後輩くんとは、話したこともなければ顔も知らなかった。

 もちろん、名前も知らない。

 そんなに、顔は悪くない……むしろ良いほうに分類されるであろう。

 なのに、どうしてあたしなんかに告白だなんてしたのだろうか?

「は?って……先輩が好きなんですっ!」

「…なんであたし?」

 思ったことを口に出せば後輩くんは顔をポッと紅くしあたしから視線を外した。

「………一目惚れしたんです。
……秋ぐらいだったと思うんですけど、先輩俺とぶつかったんです。覚えてないと思うけど……その時からずっと」

 ………あっ!

 思い出したっ!!

 あの日は、あたしが転入してきた日で廊下で……。

 この後輩くんは、プリント落としたんだっけ?

 それを、あたしが拾ってあげた……。

 って、これ普通なんじゃないの?!

 ぶつかっておいて落ちたモノを拾わないって最低なことでしょ?

「………あたしが、プリントを拾ったから?」

「先輩、覚えてるんですかっ?!」

 そんなキラキラと光った笑顔を向けないでほしい。

 それと同時に、あたしを廊下の壁に押しやるのもやめてもらいたい。

 ほら、背中が壁にピタッとしちゃったじゃない。

 しかも、後輩くんは優に180センチを越える身長。

 あたしなんか隠れて見えないじゃないっ!!

「お、覚えてはいるけど……ごめんね?
あたし、あなたの気持ちには答えられないわ………それじゃ」

 告白を断りその場から逃れようと思って元来た道に体を向ければあたしの目の前に長い手が行く手を阻(はば)んだ。