オレンジ色の奇跡




 玄関に行く途中に相川の部屋がある。

 俺の足音が響くなか相川の部屋の前で足を止めた。

 相川の部屋のドアには“MAKI”と可愛らしいネームプレートが掛かっている。

 コンコンとドアをたたく音が響く。

「…相川?入るぞ?」

 部屋から何も応答がなかったため、一声かけてからドアを静かに開けた。

 部屋に入ると、ベッドの隣に座り込み頭だけをベッドに乗せている相川の姿。

 近くまでいき顔を覗きこめば“スースー”と心地よさそうな寝息が聞こえてくる。

「はぁー……可愛いな」

 俺は相川の髪を触りながら呟いた。

 もし、起きていて聞いていたらどうしようかと思ったが、その時はその時でうまく誤魔化そうと思った。

 よく見ると、頬には涙の跡がある。

 相川を起こさないようにそっと頬に触れる。

 相川の頬は冷たくて、そのまま抱きしめたくなった。

 でも、抱きしめたら最後。

 理性が保たないだろうと思ったから相川をベッドに運んで帰ろうと思った。

 まず、ベッドに敷いてある布団を足元へ寄せる。
 その後、相川を抱き上げて寝かし布団をかける。

「……起きねぇし」

 俺は、相川が起きないことを確認して相川の額にキスを落とす。

「……コレくらい許せよ?」

 やべぇ…。絶対、顔、赤いな……。

 俺は、この前借りたマフラーを机の上にメモと一緒に置き、部屋から去った。