オレンジ色の奇跡



「そうですよね。朔真さん、この間はどうも」

「いやいや、お礼を言うのは俺達のほうだ」

「本当だよな、啓輔。ありがとな」

「舞希、啓輔はな、お前を守るために送り迎えしてくれたんだよ」
「えっ……?」

 意味が分からず岩佐先輩に視線を向けたけれど、岩佐先輩は朔兄を見ていた。

「ごめんな、舞希……。
俺さぁ……喧嘩に巻き込まれたんだ。その相手が悪くてよ。

もしかしたら、舞希に手がいくんじゃねぇかって……。だから、そいつらの処分が終わるまで家に帰って来れなくてさ……。

お前に心配かけたくなくてサクに嘘ついてもらったんだよ」

「それで、俺が啓輔に事情を話したってわけだ……。ごめんな、嘘ついて……」

 あたしを心配してくれる気持ちは分かる、分かるよ?

 でもね……。なんで関係のない岩佐先輩を巻き込む必要があるの?

 先輩は優しいから………。

 朔兄が言ったことを断れなかったんだ。

 あたしは、先輩の優しさに期待してた。

 そんな自分が馬鹿みたい……。


 ―――期待した自分が情けない

 先輩はただ朔兄に言われたから、あたしと一緒に帰ったりしてくれてた。

 あたしは、先輩の優しいトコロ好きだよ?

 でもね…………?

 そんな優しさいらないんだよ………。