オレンジ色の奇跡



◆……

 “友達以上恋人未満”なんて言葉が、ピッタリと当てはまるあたしと岩佐先輩の関係。

 黙々と隣で歩いている岩佐先輩に、目を向ければ空を見上げながら歩いている。

 なんか虚しくなってきた。

 そういえば、岩佐先輩は彼女とかいるのかな?

 今までそんな話にならなかったし先輩も聞かないということは、あたしに興味なんてないということ?

 ………やっぱり虚しい。

 先輩とは反対に俯きながらあるけば、隣に居たはずの先輩の姿がいきなり消えた。

 後ろを振り返れば先輩はピリピリと鳴いている携帯電話を取り出した。


「……もしもし」


 今まで空を見上げていた視線を地面に落とした。

 そのため表情がよく分からない。

「あぁ…あっ!そうですか」

 パッと視線を前に戻しあたしに笑顔を向けた。

 その笑顔にキュンッとしてそのままあたしも先輩に笑顔を向ける。

「分かりました。一緒に行きます、それじゃ」

 携帯電話をお尻のポケットにしまいまた歩き始めた。

「今日、相川の家行くから」

「…へ?」

 そんなさらりと言っちゃうことですか?

 結構重要なことだよね?

「ちょっと朔真さんに呼ばれてさ」

「あっ……朔兄が……」

 ちょっぴり期待したのが悪かったのか少しトーンダウンしてしまった。

「………嫌か?」

 心配したような表情であたしと視線を合わせるように先輩が屈(かが)んだのを見て思わず顔が綻ぶ。

「嫌なわけないですよ!むしろ、嬉しいです」

 あたしたちはまた並んで歩きだした。