オレンジ色の奇跡



◆……

「なぁ、啓輔〜。まじ、優衣って可愛いんだよ〜」

 祥也が甘ったるい声で惚気るからイライラしてきた。

「なんなんだてめぇっ!気持ち悪ぃんだよっ!」

「はぁ………。なんでさっきから機嫌悪いわけ?
俺が惚気ようが惚気まいがどうせキレてたんだろ?」

 なんてやつだ……。

 俺が機嫌悪いのを知ってて惚気てたのか?

 まじ、立ちの悪いやつだな。

「…………どうせ舞希ちゃんのことだろ?何かあった?」

「………………今日見ただろ?
相川が楽しそうに男と話してるところ」

「あぁ、見たよ?何、自信なくしたのか?」

「………あたりめぇだよ。
俺みたいにひねくれてる奴より、アイツみたいな爽やかで真っ直ぐな奴選ぶんだろーな、って思ったんだよ!」

「確かに、あの男は男女共に共感を得るタイプだと思う。

でもさ、舞希ちゃんはひねくれてる、ひねくれてない、なんて関係ないと思ってるんじゃない?
そうじゃなかったら啓輔とあんなに仲良く話さないと思うけど?

舞希ちゃんは、ちゃんとお前の優しい部分を知ってるし啓輔っていう人間を分かってくれてるんじゃないかな?

だからこそ、啓輔も舞希ちゃんのこと好きになった。

啓輔、そうだろ?」


 ……そうだ。

 祥也に諭されたのは悔しいけど、俺は、相川のそういうトコロに惹かれたんだ。

 相川と話せば自然と笑顔になるし、無性に触りてぇとも思っている自分がいる。

 相川の笑顔を守るためならなんでもできる。

「あぁ、そうだよ。
俺は、相川のそういうトコロが好きなんだよ」

「啓輔にしては、珍しく素直じゃん♪」

「るせぇよ」

「ほら、行けよ。舞希ちゃん行っちゃうぞっ?」

「わぁったよ、じゃな」

 相川の前でも素直になれたら苦労しないんだろうな。

 祥也みたいにストレートに気持ちを伝えることはできない。

 でも、自分の気持ちを隠しているのもなんだか良い気分でもない。

 好きなやつの前で素直になることほど難しいことなんてないのかもしれないな……。