三日月にキスをして

「それより慎」

「ん?」


「早く教室から出ていってよ。次体育なのに女子が着替えられないじゃん」

「うげっ」



次の授業まであと5分くらいしかないのに、慎が教室にいるからと着替えられずに気まずそうな女子たち。

それにようやく気づいた慎は、急いで自分の体操着を持って「みんなごめんっ」と慌てて出ていった。


この周りの見えなさ、もはや天才的だと思う。




私も急いで着替えを始める。

確か、今日はマラソン大会に向けての校庭ランニングだったっけ。

いくら秋風が涼しくなったからって、お昼休み終わりに何周も走るのは気と足が重い。


校庭に向かう途中の廊下で、フラフラと歩く氷室先輩と会った。



「2年の教室って、そっち方向じゃないですよね」

「んー、サボり」



全然誇らしくないことなのにピースしてみせる先輩は、私に「マラソンファイト」と言いながらまたフラフラと歩き出した。



いいなぁ、なんて思ってない。

別に運動は、嫌いじゃないもの。