三日月にキスをして




........あ。


「先輩」

「ん?」



「先輩って、彼女作んないんですか?」



ふと、思い出して聞いてみる。

これも本当かは知らないけど、氷室先輩は誰とも付き合ったことがないらしい。


このお弁当、もしかしたら彼女という存在が作ったのかもしれないけど。



「んー。まぁ、いらないかなぁ」


食べ終えたお弁当をしまいながら、先輩は答えた。

意外な返答。



「え、なんでですか?」

「だって、好きとかわかんないし」

「えぇ?!キスするのに?!」

「好きじゃなくたってキスはできるじゃん」



先輩の言ってる言葉の意味かわからなくて、私の頭は一瞬真っ白になる。



好きじゃない人とキスぅ.....?!


平然と答える先輩は、どうやら頭のネジが1本どころか50本くらい飛んでるようだ。




「...........先輩って、変ですね」

「そうかな」

「そうです」


好きでもない人と、鼻と鼻が触れ合う距離まで近づくなんて、イカれてないならなんだってんだ。



「絢瀬もしてみる?」

「嫌です」

「ふっ.....」



何そのわかりやすい嫌そうな顔、と先輩は笑う。


いけないいけない。

思わず全面に嫌悪感が出てしまった。



「絢瀬って、変だね」

「先輩には敵いません」

「そうかな」

「そうです」



何がおかしいのか、先輩は大きく肩を揺らした。

やっぱり、氷室先輩は別世界の人だ。