「私でよければ、お話聞きます」 「ありがとう。桜井さんは、いつも患者さんのことをよく見ているからね」 有澤先生は、そう言って蕾の目を見た。 その優しい瞳に、蕾は吸い込まれそうになった。 しかし、ふと彼の左手に視線が移った時、また胸が締め付けられる。 「...先生、その指輪、奥様のものですか?」 蕾は、我慢できずに尋ねてしまった。