さくらびと。本編






「桜井さん、ちょっといいかな」








 
 昼休み、食堂で一人、サンドイッチを食べていると、有澤先生が声をかけてきた。








彼の、穏やかな、それでいてどこか人を惹きつける声に、蕾の心臓はドキリとした。






 
 「はい、なんでしょうか?」







 
 「この前の患者さんの件で、少し相談したいことがあるんだ」
 







 有澤先生は、そう言って蕾の隣に座った。




彼は、患者の些細な変化にもすぐ気づく、鋭い観察眼を持っていた。





そんな彼が、自分に相談を持ちかけてくる。



蕾の顔に、自然と笑みが浮かんだ。