蕾は、決心したように、言葉を紡ぎ始めた。 しかし、その先へ進むことができない。 有澤先生の指輪が、どうしても、蕾の言葉を阻んでしまうのだ。 彼女は、過去に亡くなった患者、千尋のことを思い出し、そして、有澤医師の亡き妻のことを思った。 結ばれることのない、二人の運命。蕾は、歯を食いしばり、絞り出すような声で言った。