「...有澤先生、お呼びでしょうか?」 蕾が声をかけると、有澤先生はゆっくりとこちらを向いた。 彼の左手薬指には、やはり、あの結婚指輪が光っている。 蕾の胸に、切ない痛みが走った。 彼は、この病院での仕事を終え、故郷である京都でクリニックを開業することが決まったというのだ。 それは、7年後の話だったが、彼がここを去るという事実に、蕾の心は大きく揺れた。