「...葵くんのお母さんて、どんな人だったの?」
思わず、そんな言葉が口から出てしまった。
悟は少し驚いた顔をしたが、すぐにいつものように笑って答えた。
「んー?どういう人だったかな。あんまり覚えてないな。でも、俺が小さい頃、いつも笑顔でいてくれた気がする。」
彼の言葉は、どこか寂しげだった。
その寂しさに、私は胸が締め付けられるのを感じた。
彼の優しさは、そんな過去を乗り越えてきたからこそ、生まれてきたものなのかもしれない。
「...私、葵くんのそういうところ、好きだよ。」
また、素直じゃない言葉が出てしまった。
本当は、もっと、あなたのことを知りたい。
あなたの過去も、あなたの全部を。



