「あのさ、澤村さん。」
葵が、私の手をそっと握った。
その温かさに、私はゆっくりと心が満たされる感覚になった。
これまで、何度か触れ合ったことはあったけれど、こんな風に手を握られたのは初めてだった。
「俺、澤村さんのこと、ずっと見てきたんだ。
最初、転校してきた時、綺麗だな、って思った。
それから、話すたびに、もっと澤村さんのこと知りたいなって思った。
澤村さんの、素直になれないところも、一生懸命なところも、全部好きになった。」
彼の言葉は、ひとつひとつが私の心に深く響いた。
私も、あなたのことが好き。あなたのまっすぐな優しさに、いつも救われている。
「...私も、葵くんのこと、好きだよ。」
ようやく、自分の本当の気持ちを伝えることができた。悟は、私の言葉に、嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、澤村さん。俺、ずっとこの瞬間を待ってたんだ。」
彼の言葉に、私は思わず涙ぐんでしまった。
文化祭の準備で忙しかった日々は、もうすぐ終わる。
でも、これから始まる、私たち二人の新しい日々が、私を待ちきれない気持ちにさせていた。



