初恋の距離。







「ん?今なんて言った?」






「いや、なんでもない!」






「ふーん?まあ、いいや。そういえば、澤村さんって、俳優の斎藤くん、好きなんだっけ?」








「えっ!?なんで知ってるの!?」







「あはは、なんとなく。いつも、斎藤くんのドラマ、楽しそうに見てるもんね。」










 
 彼の言葉に、思わず笑ってしまった。




私の好きな俳優のことまで、彼は知ってくれていたのだ。




彼のさりげない優しさに、私はまたドキドキしてしまう。





 
 「斎藤ん、かっこいいもんね。でも、俺の方がかっこいいけどね。」






 
 そう言って、彼は得意げな顔をした。








 
 「もう、そういうこと言うのやめてよ。」









「だって、本当のことだもん。」







 
 二人の間で、軽快なやり取りが続く。






窓の外の雨音は、まるで私たちの会話に寄り添うように、優しく響き続けていた。





この穏やかな時間が、いつまでも続けばいいのに、と私は思った。




雨音と、彼の声と、そして、ほんの少しの寂しさ。







 
 その全てが、私の心を温かく満たしていく。



この雨の日、私たちは、お互いの存在の大きさに、ゆっくりと気づき始めていた。




そして、この心地よい沈黙と、時折交わされる言葉の端々に、友情とは違う、特別な感情が芽生えているのを感じていた。